日頃の教学や治療の中、生徒たちや患者様から様々な質問をされています。その中、皆様が関心も持つ、数多く重複
されている共通問題や結構重要なものが含まれています。長年の臨床経験に基づき、これらの問題を整理してできる限
りわかりやすく順次に書き込もうと思っています。皆様の健康に役に立つことを心より願っています。
 ご質問などがありましたら、こちらまでお願いします。ご質問について、すべて返事及びご満足できかねますので、
どうぞご理解頂けますようお願いします。
問題の分類 問題内容
東洋医学全般  ●廃医存薬_憂慮すべき日本の東洋医学の現状
 ●漢方医学の「弁証論治」について
 ●「冷やす」か温まる」か?
整体師養成  ●整体学校の「近親遺伝」とは
 ●通信教育は本当に整体師になれますか?
推拿整体治療  ●中国整体(推拿)はマッサージやカイロプラクティックとの違い
 ●整体で治療できるとできない腰痛症があります
 ●足裏の“ツボ”は東洋医学だ。ほんとう?
 ●刺激」こそ推拿治療の原点である
 ●「体性痛」「内臓痛」の鑑別について
「廃医存薬」_日本の東洋医学の現状について
来日三十余年、日本の東洋医学の現状を考えると憂慮すべきことが多々あります。その原因は以下のようなものがあると考えています。

1.人材不足_ すなわち、東洋医学の専門人材が不足しています。
日本の法律上においては漢方などを取り扱うことのできる者は医師と薬剤師と限られています。しかし、両者とも漢方を正確的、有
効的に運用できるとは思いません。
まず、東洋医学と西洋医学は理論から臨床までまったく違う医療体系です。
日本のお医者さんは(しっかりと東洋医学を勉強したものを除く)ほとんど西洋医学出身者で、どうしても無意識に西洋医学の先入
観を持っています。臨床に当たって西洋の理論の下で漢方を運用することになりがちです。
また薬剤師の場合、薬の知識があるかもしれませんが、人体の構造や病気について素人と余り大差がありません。漢方薬の臨床応用
に不適切だと思います。
2.廃医存薬_ 文字通り、東洋医学の理論を廃止し、薬のみを残すとのことです。
東洋医学の長い歴史の中、漢方薬や針などその有効性が実証されたものです。例えば医療現場で保険に適用し、よく処方されている
「ツムラの漢方」とかはその実例です。「餅は餅屋」ということわざがあったように、その漢方薬は漢方の理論の下で使用されるべ
きものだと考えられます。しかし前述のような、西洋医学出身の医者は、東洋医学の理論を無視して西洋医学の観点で漢方を取り扱
うことが、まさにとんちんかんと言わざるを得ません。「廃医存薬」です。
また、漢方を使うと同様、針灸師も同じ現象があります。たとえば東洋医学の「弁証」をせずに、西洋医学の病名などに基づいて、
ツボや経絡を選ぶのも「廃医存薬」の実例です。
従いまして、日本の東洋医学は医学教育から臨床まで抜本的な見直さない限り、真の「東洋医学」とは言えないでしょう。
「近親遺伝」_日本における整体教育の現状について
現在、様々な整体学校が乱立の中、良い整体師になるためにしっかりとその「学校」のDNAをを調べなければなりません。
それでは「近親遺伝」はどんなことでしょう。整体学校とどんな関係があるのでしょう。それは私が今の世の中に溢れるほど多く存
在している、いわゆる「整体学校」(教室)の現状についての考え方です。
来日当初(平成元年)のことを思い出して、整体の学校は、指折りのほど数が少なかったです。近年「雨後の筍」のように現れてき
ています。良い面は整体業の繁栄の現れだと思います。一方知識が乏しい、技術が雑な「整体師」の氾濫も否定できないでしょう。
この現状を作り出したのは「近親遺伝」だと思います。
例えば、ある学校から卒業生が出て、その卒業生はまた何処かの地元で教室を開く、その教室から更に卒業生を生み出します。この
ように子輩、孫輩のような「学校」が年々増えつつあります。長年の整体師育成現場より分かったことですが、とても優秀な整体師
になった生徒がたくさんおられますが、教育者になるためにはもっと正規な医学教育を受けて、もっと全面的に医学知識を把握する
のは必要不可欠だと考えています。
もう一つ強調すべきことですが、どんな教育にしても、学生としてすべての知識を100%吸収できるのは数少ないと考えられます。
しかしながら、100%未満の知識しか有する者がいわゆる遺伝上に欠陥をもつものでしょう。この種の人間はさらに教育者として他
人に対して教鞭をとることは、まさに一種の「近親遺伝」のほかに何でもありません。
このようなことを考えると、整体教育の将来について心配で禁じられません。
「冷やす」か「温める」か?
人々は日常生活やスポーツなどによる「捻挫」などの怪我が度々あります。「アイシング」療法として氷などにより患部を冷やしたり、整形外科に行くと「冷やせ」と言われ、医者からたくさんの冷湿布をもらったりすることがよくあります。しかし、これは「血行が悪くされるよ」と警告を発する人がいます。果たして「冷やす」と「温める」と、どちらにすべきだろうか?
まず、怪我した時の患部の病理変化から見なければなりません。
内部出血」状態:怪我直後(一般的に1~2日以内)、内部組織や皮下組織および毛細血管が損傷され、出血が発生します。症状として局部の発赤や熱感などが現れます。
うっ血」状態:内部出血の後(一般的に2日以上)、上記のような「内部出血」が止め、局部の熱感が消え、肌色が紫に変わります。出てきた血液が周辺組織の中に溜まるようになります。
従いまして、上記のような病理変化がわかれば、処置方法も簡単となります。
「出血」に対して「止血」で、患部を「冷やし」て毛細血管を収縮させ、血を止めます。
「うっ血」に対して「活血」で、患部を「温め」で、毛細血管を拡張させ血行を良くします。周辺組織の回復を促します。
ここで強調したいのは、長期間のアイシングにより、局部のうっ血状態を長引き、組織の中に溜まっている「瘀血」がなかなか吸収されず、腫れや浮腫みなどの悪い状態が長くつつくこととなります。注意すべきです。
通信教育は本当に整体師になれますか?
最近、ネット上でよく「整体師養成通信講座」のような広告やウエブサイトが見かけられます。当所においても「通信教育で本当に
整体師になれますか」との問い合わせがよくあります。結論から言うと「NO」です。
なぜならば、整体技術は手技療法であり、技や心得などが実践により体得するしか習得できないものです。ビデオや絵本などを通じ
て絶対に不可能です。
簡単な例を挙げてみましょう。自動車の運転は車両感覚やハンドル操作など、直接運転を行わなければ、絶対に身につけることがで
きません。教本やビデオだけの勉強でいきなり街を出て、必ず交通事故を起こすのでしょう。まして整体師になるのは他人の健康に
直接関わる仕事なのでしっかりと技術を習得しない限り、人々の健康に害を及ぼす虞があります。
従って、安易に「通信教育」や「短期合宿」のような宣伝を信じては行けないと初心者の皆さんに忠告しておきたいと思います。
中国整体(推拿)がマッサージやカイロプラクティックとの違い
整体とマッサージ、同じように手技を用いて治療を施すことですが、両方の間に根本的な違いがあります。
日頃の施術やネット上で雑談する際、よく“整体とマッサージはどう違うんですか”と聞かれています。簡単にいいいますと、マッサ
ージは基本的に「筋肉調整」(筋肉を揉んだり、ほぐしたりすること)を施術の中心となっています。中国整体ではこり、痛み、
しびれ等のような病理変化をもたらす原因が筋肉自身以外、骨格のゆがみやずれなどによるものがあると認識しています。従ってこ
れらの病理的変化を解消するために、「筋肉調整」以外、「骨格矯正」や「ストレッチ」や「関節運動」等の手法が必要不可欠
だと考えています。複数種類の手法を用いて施術するのが特徴です。またカイロプラクティックという米国式の整体がありますが主
に背骨を中心とする骨格矯正法を行います。どっちかと言いますと、中国整体は東洋医学の理論である陰陽五行、五臓六腑、経絡とツボなどに基づいて行われるものであり、カイロプラクティックは解剖学や生理学などの理論に基づき行われたものであり、西洋医学的なものです。理論から手法まですべて異なっています。
整体で治療できるとできない腰痛症があります
日頃、腰痛症で来院した患者数は絶対的に多いですが、中には整体療法で対処できるものと対処できないものがあります。
腰痛に対して、短絡的にすべての患者さんに施術するのは時々無効、または適切な治療時期を逸したりします。場合によって危険を
伴ったりすることがあります。
ここで主に整体療法で治療できないものを幾つあげてみます。
1、内臓疾患によるもの_例えば腎臓病(腎盂炎や糸球体性腎炎等)の殆どは腰痛を伴います。また婦人病として子宮や卵巣等の腫
瘍や炎症などの場合も腰痛を伴います。腎臓病によるものは、ほとんど効果がなく、腫瘍や炎症によるものは反って病状を重くする
ことがあります。
2、腰椎の骨が脆くなっているもの_例えば腰椎結核症や骨粗鬆症などが骨自身が脆くなっているため、整体の骨格矯正は骨折を引
き起こす危険性があります。
従いまして、施術者は勿論、患者としてもこれらのことを知っておく必要があるでしょう。
足の“ツボ”って、東洋医学だ。ほんとう?
近年、街を歩いて、あちこち足ツボマッサージの看板が目にします。それに“東洋医学”を冠するところも少なくありません。しかし
それに疑問視することがほとんどありません。「足の“ツボ”って、ほんとう?」と思う人が数少ないのようですね。ところがそれは
とんでもない勘違いです!
そもそも人間の足には足背や指先および内外の縁にはいくつのツボがありますが、いくら古来の文献を調べても、足底に「湧泉」と
いうツボ一個しかありません。足裏マッサージによる“足ツボ”の図解のようなものが、一切見当たりはしません。
って、足のツボは一体何なんですか。
それは決して東洋医学のではありません。あくまでは足マッサージを最初に考案した人の発想に過ぎません。だからと言ってここで
は、決してそれを否定するつもりではなく、東洋医学や経絡ツボと混同されないよう、皆さんの注意を喚起したい所存です。
漢方医学の「弁証論治」について
東洋医学では、臨床的に「弁証論治」という極めて重要な原則があります。すなわち「(病)症を弁別しながら、治療を論ずる」と
のことです。
数年前、仕事の緊張などによりストレスが溜まり、胃の調子がかなり悪くなっていた時期がありました。病院へ行って様々な検査を
受けたところ、どこにも器質的な病変が認められませんでした。「胃酸過多」だと診断され、最初は「ガスター10」、効果がない
から、続いてガスター20が投与されました。しかし数か月を経っても症状が一向も良くなりません。
担当医の先生はかなり困っている様子でした。ある日、先生がポケットから小さな冊子を出して、「賀さんは漢方に詳しいから、何
か良い漢方薬がありますか」と尋ねられました。それは保険に適用されている「ツムラの漢方」でした。
そこまで言われましたので、遠慮なく「逍遙散」があれば処方して頂けますかと返事しました。先生は冊子を調べながら「逍遙散が
ありませんが加味逍遥散があります」。薬の組み合わせが基本的に変わらないので「それでもいいですよ」と先生に告げました。
しかし、先生が首を横振りながら「これはダメですね」。なぜならば、冊子の「効能・効果」に「冷え症、虚弱体質、月経不順...」
などが書かれているので、これは「婦人病の薬じゃないの」と先生が処方してくれませんでした。代わって「四君子湯」が処方され
ました。勿論効果がありませんでした。
漢方の「弁証論治」をすれば、「四君子湯」と「逍遙散」とのちがいがすぐわかります。
「四君子湯」は「脾胃虚弱」、すなわち胃腸の弱い病気を治療する薬で、「逍遙散」は「肝気犯胃」、すなわちストレスなどが引き
起こされた消化系疾患を治療薬です。東洋医学の理論から見れば、前者は「虚」証で、後者は「実」証です。虚証に対して「補法」
で正気を補い、実症に対して「瀉法」で邪気を取り除かなければなりません。「八綱弁証」や「臓腑弁証」によって、両者は「虚」
と「実」の正反対の性質を持ち、まったく違う病気の類別ですので、治療法も薬も違うものです。
また、中医学では「治病求本(病気を治すには、その元(原因)を追求しなければならない)」という治療原則があります。「ツム
ラの漢方」に記載されているのは「精神的なストレス」による生理不順などの「婦人病」は、私の胃病の原因と同じです。すなわち
病気の「本」が同じなので、本来は適応症のはずです。しかし、西洋医学出身の先生がこの中医理論を理解していないから、単なる
「胃」という西洋医学の解剖的観念から病状を考えて、処方してくれませんでした。ちなみに、東洋医学では胃病にも「脾胃虚弱」
や「肝気犯胃」や「胃寒」や「胃熱」など様々な類型があり、婦人病にも「肝腎不交」や「腎虚」や「気血不足」等々の類型があり
ます。これらの病症を「弁証」しないまま、漢方の治療効果がえられません。これだけではなく、時には病状を悪化させる場合があ
りますね。
「刺激」こそ推拿治療の原点である
現在、世の中「無痛療法」とか「ソフト整体」とかいうような手技が流行しているのですが、ここでは東洋医学の観点からこれらの「手技」について分析してみます。

1.経絡理論_ 東洋医学の「整体観(一体観)」では、人体は一つの有機的な物体です。すなわち、内臓と体表、内臓と内臓の間に密接な関係を持
っていることです。この強いつながりは経絡により実現されています。中医学では針、灸、推拿、按摩、火罐(吸い玉)、刮痧(グ
アシャ)など様々な伝統療法はすべてこの経絡理論に基づいて行われています。
まず、これらの伝統的療法は一つの共通点として、それぞれの施術がすべて体表を行われていることです。ここでは経絡理論の中
内臓と体表との関係がとても重要となってくるのです。この理論を理解できれば、内臓の病変が経絡を通じて体表に現れることが
わかります。一方、体表の特定の部位(それぞれの臓腑が所属する部位)に刺激を与え、この刺激がまた経絡を通じてそれぞれ関連
する臓腑に伝わるとのことをも理解できます。
2.刺激と得気_ 手技療法の原点は「刺激」により「得気」をさせ、生体に影響を与えます。
左記のように、中医学では漢方以外、針、灸、推拿、按摩、火罐(吸い玉)、刮痧等々、薬を使わず行われたあらゆる治療法は生体
の表面に刺激を与えることです。したがってこれらの療法の原点は「刺激」です。
「刺激」とは、施術により患者さんの生体を感じさせること。針や指などで物理的にツボや経絡に刺激を与えることによって、一種
の生物的情報を生体に与え、さらにこの生物的情報は経絡を通じて相応の内臓や器官に伝えて生体の生理、病理状態を調節するとい
うことです。
刺激を通じて生体が感じ取れた感覚が「得気」と呼ばれています。これは単なる痛みだけではなく、「酸(怠い)、麻(しびれ)
、脹(重い)」という具体的な感覚を指します。臨床的にこの「得気」が得られるかどうかは、治療効果の有無を判断する基本材料
となっています。従いまして、この刺激(得気)を患者さんに感じできないものは、本当の治療法でしょうか。この原点を無視した
ものは、果たして「刺激療法」といえるのでしょうか。
「体性痛」と「内臓痛」の鑑別について
「先生、私のこの痛みは内臓によるものなのか」、「もしかしたら内臓のどこが悪いのではないか」と、よく患者さんから聞かれています。
「体性痛」とは、筋肉、骨格、関節、皮膚、結合組織などに発生する痛みのことです。一般的に外傷や炎症の刺激によるものがほとんどです。
「内臓痛」とは、名の通り内臓の病変によるものです。
ここでその区別について、下記のいくつの点から簡単に説明します。

1.圧痛点
圧痛点とは圧迫すると痛くなる点(場所、部位など)です。この圧痛点は以下のように分類されます。
(1) 直接性圧痛 ある部位を直接押さえると、痛みが発生、あるいは増強する)
・深圧痛 深い部位をやや力を入れて押すと発生、あるいは増強する 骨や関節などの損傷を意味する。
・浅圧痛 浅い部位を軽く押すと痛みが発生、あるいは増強する。 皮膚や筋肉など軟部組織の損傷を意味する

(2) 間接性圧痛 ある部位に痛みを感じるのだが、その部位を押すと具体で
明確な圧痛点がみあたらない。片掌でその部に当て、もう
片手はこぶしでその手の甲をたたくと痛みが内部に響く。
内臓痛の可能性が大きい。

2.運動との関係
「体性痛」が筋肉や骨格、結合組織等の運動器に損傷があったため、疼痛部位を動くと痛みが発生、または増強する。
「内臓痛」の場合、運動器とは関連していないため、動いても痛みが変わらない。

3.併発症状の有無
内臓の病変によるものであれば、必ずその臓器の特有の併発症状を持っている。例えば、腎臓などによるものであれば、尿の異常や浮腫みなど、胃腸によるものであれば、食欲不振や吐き、嘔吐、下痢など、心臓など循環器系によるものであれば、動悸や不整脈などが併発されている。
運動系の損傷であれば、上記のような併発症状がありません。

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